南米自転車旅行記チリ編2

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再びチリへ

 アルゼンチンのバリローチェから、南西に進行方向を変え、再びチリに向かう。途中いくつかの湖を船で渡るルートだ。バリローチェから、ジャオジャオまで走り、そこから船でナウエル・ウアピ湖を渡る。少し走って、また小さな湖を船で渡る。そして再び自転車でチリへ入りペウジャへ、再び船でトドス・ロス・サントス湖を渡る。湖と湖を結ぶ道は船からの乗り継ぎ用のバスが、1日1本通るだけであとは自転車の天下だ。しかし道が未舗装でひどい。アルゼンチンとチリの国境まで急坂を登り、そこから急坂を下る。道はドロドロでしょっちゅうタイヤを取られて転倒する。しかし深い森を抜け、途中にいくつもの滝がある景色のよいルートだ。サイクリストに人気のコースのようで、地元のサイクリストによく会った。
 トドス・ロス・サントス湖を渡っていると前方に富士山のような山が見えてくる。チリ富士と呼ばれる、オソルノ火山だ。その日泊まったキャンプ場は湖越しにオソルノ火山が望める所だった。観光バスがキャンプ場に入ってきたので「何ごとか?」と思っていると、おばさん達が降りてきてテントを張り出した。観光バスで来てキャンプをするツアーのようだ。このあたりではキャンプがかなり人気があるようだ。今、チリやアルゼンチンは夏のバカンスのシーズンで多くの人がキャンプに来ている。
 そして自転車でプエルトモンの街へ向かう。

プエルトモンの漁港で

 プエルトモンは漁港の街で、新鮮な海産物が食べられる所で有名だ。街から1kmくらいの所にアンヘルモという漁港があり、海産物のレストランがたくさんある。プエルトモンでは毎日ここに通って、貝やウニ、サシミ等をたらふく食べた。日本人はやはり海産物が好きなようで、ここに行くとよく日本人に会う。なんと偶然にも日本人サイクリストが5人もそろってしまった。私と、一緒に走っていた高島さん、そして中南米を走っている友岡さん、夫婦で世界一周中の瓢子(ひさご)夫妻の計5人だ。
 高島さんとこれから先のルートについて話をする。この近くのチロエ島は走ってみたい。チロエ島の対岸のチャイテンから400kmほど南のコジャイケまでは、道はひどいが景色がすばらしいらしい。その先はチリ側には道がなくアルゼンチン側を行くしかない。延々無人地帯が続き、かなりきついらしい。それと船のルートとスケジュールを考えて、次のようなルートで行くことにする。まずチロエ島に渡り、チロエ島南端のケジョンの町まで走る。そして船でプエルト・アイセンへ行き、そこから自転車でコジャイケへ、今度は逆に北上してチャイテンまで行き、そこから船でプエルトモンに戻ってくる。そしてまた船で南部パタゴニアのプエルト・ナタレスへ行く。

チリをさらに南下する

 チロエ島はアップダウンが多く、道の勾配が急でかなりきつかった。天気が悪く、何度も雨に降られた。プエルト・アイセンからコジャイケまでの間も雨だった。谷底を走っていき、雨でいくつもの滝ができていて迫力があった。
 コジャイケの街の手前で2人連れのチリ人サイクリストと会う。チャイテンから走ってきたらしい。チャイテンまでの道の情報を教えてもらう。コジャイケに着いて4人でホテルを探す。私が「ここは汚い」、「ここは高い」などとだいぶ文句を言ってしまったので何軒も回る。民宿でなかなかいいところがあったのでそこに決めると、彼ら二人は、「自分たちはユースホステルに泊まるから」と言って、行ってしまった。彼らもホテルを探していると思っていたのだが、私のためにずいぶん迷惑をかけてしまったようだ。しかし彼らはいやな顔一つしなかった。その夜は、私と高島さん、彼ら2人の計4人で飲みにいった。彼らはここから南部パタゴニアのプンタ・アレナスまで走るという。とてもさわやかな2人だった。
 コジャイケからチャイテンまでの道は、聞いていた通り道はひどいが景色がすばらしかった。途中、氷河やフィヨルド、いくつもの湖を見ることができる。しかしこのあたりは雨が多く、何度も雨に降られた。途中何度か民家の1部屋だけを貸しているような民宿に泊まった。民宿はたいていおばさんか仕切っていて、そのおばさん達はみんな元気で個性が豊かだ。人々がみな明るく親切なのでチリの旅は楽しい。チャイテンからバスと船でプエルトモンに戻る。
 プエルトモンから船で3泊4日かけてプエルト・ナタレスに向かう。いろいろな国から来た外国人観光客が乗っている、人気のある船旅だ。船はチリ南部のフィヨルド地帯を行く。途中10時間程外洋に出るのでその時だけすごく揺れる。多くの人が酔っていたようだ。私はひたすら寝ていた。

パイネ国立公園へトレッキング

 プエルト・ナタレスからパイネ国立公園へトレッキングに行く。私と高島さん、船で知り合った日本人旅行者の野田さんの3人が一緒だ。パイネ国立公園はパイネの塔と呼ばれる、切り立った山々や氷河、湖などが見られる景勝地でトレッキングで有名なところだ。食料やキャンプ道具をかついで、キャンプしながら1週間程かけてまわる予定が、2日目で高島さんが、靴が合わなかった事による靴擦れと、それをかばって歩いたことで足を痛めてダウン。私も4日目で足の親指の爪をはがしてダウン。なんとか渡し船の出ている湖まで行って、その後はバスで行ける範囲をまわり、キャンプして過ごした。野田さんは一人元気に1週間歩き通した。天気もあまり良くなく、やや悔いが残るパイネトレッキングだった。

強風が吹き荒れる南部パタゴニア

 プエルト・ナタレスからまた高島さんと二人で、パタゴニア名物の強風に吹かれながら、自転車でプンタ・アレナスに向かう。幸い追い風の時が多かった。追い風になると、こがなくても進む。バイクのようだ。しかし向かい風になると必死でこいでも時速10kmも出ない。このあたりの道は2車線あるが1車線分しか舗装していない。交通量が少ないのと、予算不足の為の苦肉の策だろう。プンタ・アレナスはマゼラン海峡に面した、チリ最南端の街だ。ここからペンギンコロニーを見に行くツアーに参加した。街から60kmくらい行ったところにマゼランペンギンのコロニーがあって、たくさんのペンギンがおり、人を恐れないので間近で見ることができる。まさに陸に上がったペンギンで、よちよち歩いて時々こけたりして可愛らしい。
 プンタ・アレナスから、マゼラン海峡を隔てて南米大陸の南端にくっつくようにしてある大きな島、フエゴ島に渡る。フエゴ島を東に向かって走り、アルゼンチンとの国境をめざす。
 パタゴニアでは牧場に行くとタダで泊めてもらえ、羊の肉をたらふく食べさせてもらえる。と聞いていたので、夕方、適当な牧場へ行ってみる。日本人らしく最初は遠慮して「すいません、ここでキャンプさせてもらえませんか?」と言ってみると、おばさんは「キャンプもいいけどベッドもあるよ」と言う。「食事もどう?」と言われて、ありがたく泊めてもらって、食事もいただく。噂どおり羊の肉をたらふく食べさせてもらう。これまでにも、バイクや自転車できた旅行者が多く泊まっているという。親切でというより、旅行者が来たら泊めるのは当然という感じだった。翌朝雨が降っていたので、雨の止むのを待って昼頃までいた。昼食まで食べさせてもらった。おじさんに牧場を案内してもらう。昨日泊めてもらった家の隣に、牧場主の屋敷がある。牧場主はプンタ・アレナスに住んでいて年に何度かここにやってくるという。この夫婦は牧場主から管理を任されているそうだ。自分たちが食べる野菜は、庭で作っていて、電気は一応発電器があるが、ほとんど使わず、夜の明かりはランタンを使っている。ほとんど自給自足の生活だが割合豊かそうだ。しかし冬は大変だろう。
 追い風に吹かれて、未舗装の道にもかかわらず快調にとばして、アルゼンチンとの国境に着く。チリの出入国事務所でバイクで旅している日本人と会った。

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