南米自転車旅行記ベネズエラ編

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ベネズエラの地図カラカスからギアナ高地のエンジェルフォールへ

 '96年6月24日夜10時、アメリカ合衆国のマイアミを飛び立った飛行機は、3時間ほどでベネズエラのカラカスに着いた。ベネズエラの入国はややこしいように聞いていた。しかし、袋に入れた大きな自転車をかついでいたにもかかわらず、荷物検査もなく、あっけないくらい簡単に通してくれた。
 ガイドブックを見て適当に決めた、カラカス市内のホテルにタクシーで向かう。カラカス市内に入ると排気ガス臭い。旧式の車が多い上に盆地なので排気ガスが溜まるのだろう。
 翌日、朝から街中を歩いてみる。ベネズエラは産油国で経済的には比較的豊かな国らしく中心部は近代的なビルが多い。しかし、周辺の山の斜面にはスラムが立ち並んでいてその対比がすごい。
 長年行きたかったギアナ高地へ行くため、ギアナ高地の入り口の街、シウダ・ド・ボリバルまでの、明日の朝の飛行機を、旅行会社で予約する。
 自転車はホテルに預け、翌日朝早くタクシーで海岸沿いの空港へ行く。飛行機でシウダ・ド・ボリバルの街に着くと、空港のターミナルの中に旅行会社が入っていて、さっそく客引きに声をかけられる。ギアナ高地には垂直の崖に囲まれて、頂上の平らなテーブルマウンテンと呼ばれる山が多くある。そのテーブルマウンテンで最も標高が高いロライマ山に登りたかったのだが、今は雨期なので登れないという。落差世界最高の滝エンジェルフォール(サルト・アンヘル)まで、2泊3日でボートで行くツアーを予約する。
 次の日、6人乗りのセスナでギアナ高地にあるカナイマ村へ向かう。景色は徐々に原生林に変わっていく。カナイマ村の外れにあるアチャ滝の上空を旋回してくれた。すごい迫力だ。カナイマの村からボートと、流れの急なところは徒歩で川をさかのぼっていく。ツアーのメンバーは6人で私以外全員アメリカ人だ。途中水着になって滝の中をびしょぬれになって歩く所もある。夜は途中にあるロッジで寝る。ロッジといっても屋根があるだけで、皆ハンモックで寝る。ハンモックは意外と居心地がいい。パンチョというやたら人なつっこい鹿が飼われていて、じゃれついてくる。
 ボートはテーブルマウンテンで最大のアウヤンテプイの谷を遡っていく。両岸は険しい崖に囲まれ、たくさんの滝が流れ落ちている。今回は行けないが、あのテーブルマウンテンの上には独特の植物や動物が住む隔絶された世界があるという。やがてエンジェルフォールが見えてくる。船を下り、エンジェルフォールに向かって山を登っていき滝壷近くまで行く。落差970m、さすがにすごい高さだ。水は途中で霧のようになり滝壷ははっきりしない。エンジェルフォールの下にある小さな滝の滝壷で泳ぐ。

自転車で走り始める。

 カラカスに戻って自転車を組み立て、コロンビア目指して走り始める。カラカス市内を出るときにスラムの中の急な上り坂を、自転車を押して通った。不安だったが幸い何も起こらなかった。
 初日からさっそくパトカーの警官に止められ荷物を検査される。コロンビアから入ってくる麻薬や貧富の差などのため、あまり治安の良くない国なので、頻繁に検問がある。自転車で走っていると検問の警官がおもしろがって、「どこから来たのか?」、「その自転車はいくらぐらいするのか?」などと聞いてくる。中には私がしている時計を「売ってくれ」という警官もいた。
 景色は森や畑が続き、ヤシの木なども生えていていかにも熱帯風だ。午後は暑くなるので朝早くから昼過ぎまで走って、午後はホテルでゆっくりする。自転車競技が盛んなようでロードレーサーで走っている地元の人たちをよく見かける。
 グアナレという町の教会でミサをやっていたので覗いてみた。神父さんのお説教の後で何か言いながら周りの人と手を合わせる。中には抱き合ってキスをしている人もいた。私も周りの人と手を合わせた。なんだかベネズエラという国が身近に感じられるようになった。
 アンデス山脈の中にある観光地、メリダの街の少し手前のバリナスの町で、ホテルの従業員にマルコという英語を話せる人がいた。そのマルコに「メリダへ行くまでに3600mの峠がある」と言われる。大変そうだがとにかく挑戦してみることにする。その夜はマルコに紹介されたレストランへ行った。高級そうなレストランで、贅沢をして大きなステーキにサラダとチーズをたらふく食べて600円ほど。この国は金持ちは金持ちのようだから贅沢をしようと思えば何でもそろっている。そして日本の感覚からすれば非常に安い。
 翌日メリダへ向けて自転車で山を登っていく。山は思ったより険しく、途中何度も休憩する。近所の子供が不思議そうな顔をして見ていた。途中雨に降られて登る気力を無くし、ついにバスを止め、自転車ごと乗せてもらってメリダに向かう。峠を越えてからの景色はすばらしかった。このあたりをできればまた自転車で走ってみたい。メリダの街に着いて適当に見つけたホテルにチェックインする。民宿みたいな小さなホテルだが、安くてきれいでとてもいいホテルだ。

アンデスの高原の街メリダ

 メリダには標高4765mまで上がることができる、世界で一番長く、標高の高いロープウエーがある。そのチケットを買いに旅行会社へ行ってみる。すると今は動いていないと言われた。峠付近の町を自転車で走りたいと言ったら、そんなツアーがあるという。標高4000mの高原をマウンテンバイクで走るツアーで、普通は自転車も借りるのだが、私は自分の自転車を持っていって、ツアーに参加することにする。
 翌朝ホテルにツアーの車が迎えに来てくれた。バスで来た道を車で戻っていき、途中の街に寄りながら4000mの高原へ。そしてそこから自転車で走る。寒く、途中から霧が出てきたので車に乗せてもらう。そして車は峠を越え、すごいつづら折りの道を下ってピニャンゴの村に着く。「よくこんな所に」と思うような険しい山に囲まれた所にある。今日はここで泊まる。夕食後ガイドのルイスと話し込んだ。私の旅のことやベネズエラのこと、日本の事など。ルイスはアメリカ合衆国に住んでいたこともあるらしく英語が達者だ。私の下手な英語でも一生懸命聞いてくれた。こんなに英語で話をしたのは初めてだった。
 翌日は馬に乗せてもらってトレッキングをし、再び車でメリダの街に帰った。メリダの街の教会の前で何かのパレードをやっていた。ボディーに色々なことを書いた車にたくさんの人が乗って、大騒ぎしながら、それが何台もパレードしていく。最後に広場でみんな騒いで踊って、何か知らないが皆陽気だった。
 カラカスの日本大使館で、「ベネズエラとコロンビアの国境付近は危険なので走らない方がいい」と言われていたため、バスでコロンビアに向かう。

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