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いよいよアデンに向けて自転車で出発しようとしたら、後輪の空気が減っていた。空気を入れようとしたらいきなり空気入れが壊れてしまった。空気入れがないとパンクしたときに直せなくなってしまう。なんとか空気入れを直してみようとしたがだめだった。自転車屋はないかとホテルのフロントのおじさんに聞いてみたが、あいにく英語の通じる人がいない。高野さんを呼んでアラビア語で聞いてもらったが、自転車屋の場所は知らないそうだ。仕方がないので、自転車で街中を走って探してみる。ラマダン開けで開いている店が少ないので不安だ。無かったらどうしよう。一件目の自転車屋ではないと言われたが、二件目でみつかった。その空気入れは作りがちゃちでおまけに少し割れているが無いよりはまし。何とか使えそうだ。いったんホテルに戻って、高野さんに空気入れがあったことを報告し、ようやく出発する。
サナアの街を出ると道はだんだん登りになってくる。昼頃、腹が減ったので途中の村で「レストランはないか?」と聞いたら、野菜やらお菓子やらいろいろ売っている小さな店につれて行かれた。仕方がないのでバナナと牛乳を買う。英語を話す兄ちゃんが「腹が減っているならうちの家に来ないか?」というのでおもしろそうだと思ったが、牛乳を飲んでいる最中だったので「ちょっと待って」と言っていたらどこかに行ってしまった。残念。
登りはだんだんきつくなって、峠にさしかかる。標高は2800mほどあるようだ。峠を越えるとすごく見晴らしがいい。深い谷にどこまでも段々畑が続く。一気に下ってこんどは平原を走っていく。
マバールという小さな町で、レストランがあったので昼食を食べ直す。人がたくさん集まってきて、自転車を興味深そうに見られる。いろいろ話しかけられるがアラビア語なのでわからない。
夕方、かなり疲れて、今日泊まる予定のダマールの街に着いた。なかなか大きな街だ。旧市街はサナアのものを小さくしたような感じだが、ごみがたくさん落ちていてきたない。
翌日はイッブの街をめざす。街を出てやや走るとまた登りになる。子どもが二人めずらしがって付いてくる。こっちは上り坂をよろよろ登っているものだから、小走りの子どもに追いつかれてしまう。
小さな峠を越えるとヤリムの町に着く。ガイドブックによるとイエメンで一番高いところにある町だそうだ。露天でフライドポテトとゆで卵を買って食べていたら、またまたたくさんの人に囲まれていろいろ話しかけられる。こんな時話ができたらおもしろいだろうと思うのだが、やはりアラビア語ばかりでわからない。
町を出るとまた突然急な登りになる。また子どもが二人付いてくる。「ハロー」「What's
your name?」いつも聞かれることは同じだ。たぶん学校で習うのだろう。こっちは必死で坂を上っているので相手をしている余裕はない。内心「うる
さい、あっちいけ!」と思いつつも、てきとうに質問に答える。好奇心いっぱいの顔をした子どもがどんどん増えてきて、峠に着いたときには、たくさんの子どもに囲まれてしまい、疲れているのにゆっくり休憩もできない。
峠を過ぎるとまたすばらしい景色だ。イッブに近づくとだんだん緑が増えてくる。このあたりはイエメン一の穀倉地帯だそうだ。村が多く、途中休憩しようとすると必ず子どもが集まってきてゆっくり休めない。アップダウンも多くて疲れる。イッブの街が見えてきたが、なんと大きな丘の上にあり「あそこまで登るのか」と思ったとたんに力が抜けた。坂を上ろうとするが途中でダウンして、乗り合いタクシーを止め乗せてもらう。イッブでホテルを見つけ、少し休んでから街を見て回る。丘の上に旧市街があって、サナアなどとは土の色がちがうのか、サナアの建物が赤っぽいのに対して、こちらは黄色っぽい。
イッブの近くには、アルワ女王のモスクというのが有名な、イエメンの典型的な山岳部族の村と言われるジブラの村がある。翌日、朝から行ってみる。幹線道路をタイズの方に少し走った後に、少し横道に入るということだったので、まず、タイズのほうに向かって走る。また、急な登りだ。かなり登って、横にいた人に「ジブ
ラはどっちだ」と聞いたら、どうもかなり行き過ぎたみたいだ。せっかく登った道を下まで降りてしまって、言われた横道に入る。ジブラでは、アルワ女王のモスクを見るのにガイドの少年に金を要求され、細かいのがなかったのでだいぶ払わされてしまった。といっても日本円で数百円だが。しかしイエメンと言えども観光地はややすれているようだ。
再びタイズに向かうが、もう一度あの坂を上る気になれず、峠まで乗り合いタクシーに乗せてもらう。峠からの下りはやはりすばらしい景色だ。険しい谷と段々畑を見ながら下っていく。
タイズの街中は坂ばかりだ。街中のアップダウンに疲れて、やや値段が高かったが、とにかく見つけたホテルにチェックインする。
タイズの街中をうろうろしていたらインターネットカフェを見かけた。なんとイエメンにもインターネットカフェがあったのだ。友人にメールを出そうと入ってみる。ダイアルアップ接続で時間がかかったが、古いものばかりのイエメンでなんだかそこだけ別世界のようだった。
翌日は、タイズから、旧南イエメンの首都だったアデンを目指すが、タイズ─アデン間は何もなかったというのが素直な印象だ。半砂漠のようなところを、ゆるいアップダウンを繰り返しながら、だらだらと下っていく。途中小さな村がいくつかあるが、小さなモスクと家が何軒か並んでいるだけで、やはり何もないという印象だ。タイズ─アデン間は、地図によると153km。しかし、150kmを過ぎても街に入る気配はない。足もだいぶ疲れてきて、日も暮れかかってきたので暗くなってから街に入るのは危ないと思い、乗り合いタクシーを止めて乗せてもらう。アデンの街に入ったところで、警官に止められて、パスポートと旅行許可証を見せろと言われる。乗り合いタクシーの運転手と警官でしばらく何やら言い合っていたが、やがて「タクシーから降りろ」と言われ、別 の車に乗せられる。どこにつれて行かれるのかと不安だったが「ホテルはどこに泊まるつもりだ」と言われて「決めてないがバスターミナルの近くに泊まりたい」と言うと、適当なホテルまでつれて行ってくれた。やや高いホテルだったが、泊まらない訳にはいかない。結局どういうことかよくわからなかったがホテルを探す手間だけは省けたようだ。